会長あいさつ
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老化促進モデルマウス(SAM)学会
会長 細川昌則
老化促進モデルマウス(SAM)学会の2024~2026年度会長に就任いたしました、細川昌則です。一言御挨拶申し上げます。
SAM系統マウスは、老化促進モデルマウス(SAM)学会名誉会長の故竹田俊男先生により、ヒトの老化過程と、様々な老年性疾患について研究するための実験モデル動物として、世界に先駆けて開発された近交系マウスの集団です。
SAM系統マウスは、1975年10月から老化研究に有用なモデル動物を目指し、竹田俊男先生の指導の下、系統の樹立とその形質の特性を解析する作業が始まりました。1981年にMechanisms of Ageing and Development (17巻 183-194ページ) に第1報が掲載されてからは、広く世に知られるようになり、それ以来、国内、国外の多くの研究者にSAM系統マウスが提供され、老化研究に貢献してきました。多くの研究から次第に明らかにされてきたSAM系統マウスの特徴は、遺伝的背景の複雑さはあるものの、老化に伴う全身の変化の多くが、ヒトの老化ならびに老年性疾患と同様の特徴を示していることです。このことから、SAM系統マウスは、促進老化(accelerated senescence)と、ヒトの老年性疾患(senescence-associated disorders)の自然発症モデル動物と位置付けられています。さらに、SAMマウスが示す老化に関連した病態は、いわゆる加齢関連性病態(age-related disorders)よりも、老化過程で生じる全身の諸臓器の退行変性(degenerative changes)と考えられる老化依存性病態(age-dependent disorders)であり、これはたいへん大きな特徴であると考えます。
SAM系統マウスは、これからもヒト老年性疾患の治療・予防方法の開発に大きな役割を果たしていくと考えます。SAM系統マウスが示す老化に関連する形質のモデル性の検証から、これらの形質の分子基盤、さらにはそれらの背景となる遺伝子機能の解析と進められてきましたが、モデル性の理解には未だ歯痒いところが多く残されています。治療や予防方法の開発にむけ、これらの研究がさらに進むことを願っています。
老化促進モデルマウス(SAM)学会は、学術大会等でSAM系統マウスを用いた研究に関する情報交換を行い、HPや書籍で研究成果を広く発信することならびに、遺伝的、形質的に信頼性の高いSAM系統マウスを安定して研究者に提供することで、SAM系統マウスを用いた研究を促進し、それらの研究成果を通して世界の老化研究に貢献したいと考えています。現在当学会は様々な課題に直面しておりますが、特に今期(2024~2026年度)は、① SAM系統マウスの安定した供給体制の維持と老化形質のチェックの継続、② SAM系統マウスの基本的な特性の発信、③ SAM系統マウスの海外への分与体制の再整備などに取り組んでまいります。当学会の会員の皆様、ならびにSAM系統マウスを用いて研究を進められる皆様には、是非御意見、御助言を事務局、幹事会までお寄せ下さいますようお願いいたします。
微力ではありますが、老化促進モデルマウス(SAM)学会ならびにSAM系統マウスを用いた研究を少しでも前に進めたいと願っております。どうかよろしくお願いいたします。
2024年5月12日
細川昌則